2018年9月24日月曜日

過去完了(大過去)

「ニューエクスプレスブラジルポルトガル語」香川正子著 白水社の第18課のテーマは過去完了。
過去完了というのは例えば
「パウロが教室に入ったとき、授業はすでに始まっていた」
のように、過去の目線でそれよりさらに過去(大過去)の出来事を叙述する文体だ。
「パウロが教室に入ったとき」(過去)、「授業はすでに始まっていた」(大過去)
過去が自分よりもさらに過去を見る目線。

さて、本文は男女の会話の一場面。
ブラジル留学中の麻里が友人のパウロにマルシアの電話番号を教えてほしいという。
その慌てた様子を見てパウロはどうしたの?と尋ねると麻里は、
「私達は今晩外食する約束をしていたんだけど、目が覚めたらすぐに私の歯が痛み始めたのよ」と。
パウロ「それじゃ、つまり君は今日の夕飯をキャンセルしなきゃいけないというわけだね」

と、そういう場面だ。
僕は今例文の日本語をポルトガル語に訳す練習をしてるんだけど、前述の「私達は今晩外食する約束をしていたんだけど」は当然不完全過去で、
A gente combinava de jantar fora esta noite, だろうと思ってテキストを見たら、
"A gente tinha combinado de jantar fora esta noite,"というふうに過去完了だった。
え?過去完了?

「パウロが教室に入ったとき、授業はすでに始まっていた」が過去完了なのはすんなり理解できるけど、「私達は今晩外食する約束をしていたんだけど、目が覚めたらすぐに私の歯が痛み始めたのよ」が過去完了というのはどういうことだろう。約束をしたのはただの過去じゃないか。

だいぶ考えてようやくわかった。つまりこの文章はこういう意味なのだ。
「歯が痛み始めたとき(過去)にはすでに外食の約束をしていた(大過去)」

なるほど。僕の頭の中では過去完了というのは必ず「~したときにはすでに~していた」という文型をとるものであって、そうでないものは過去完了ではないと(知らないうちに)思い込んでいたわけだ。
そうではなくて「なにかとりかえしのつかないことがおこってしまっていた」という意味合いの場合は、あるいはそんなに大げさでなくても前段の文章と後段の文章に時間差がある場合には過去完了が潜んでいると考えるべきなのだ。
さらに言えば「私達は今晩外食する約束をしていたんだけど、目が覚めたらすぐに私の歯が痛み始めたのよ」という文章の後段だけ替えて、「私達は今晩外食する約束をしていたんだけど、そのお店は去年閉店してたのよね」とすれば前段が過去で後段が大過去になる。同じ文章なのに大過去になったり過去になったりする。どちらが意味上の大過去かは文体ではなく文章の内容から判断しなければならない。
そうすれば仮に前述の「パウロが教室に入ったとき、授業はすでに始まっていた」という文章が「もう遅くなるから授業を始めてたんだけど、しばらくして教室にパウロが入ってきたの」という変化球できても前段は大過去で後段は過去だと認識できるわけだ。

さて、前々回にアップした時制についての考察の中の以下の例文
Eu não tinha pensado nisso.(私はその事を考えていませんでした)は前段も後段もなく、単独で大過去になっている。これはどう考えたらいいんだろう。
「私はその事を考えていませんでした」を大過去とするなら、ここには「~したとき」という過去が省略されていると考えるべきなのだろう。
さらにNão sabia disso.(私はそのことを知りませんでした)が不完全過去なのはこれが現在からの視点であることがポイントなのだろう。

う~ん、時制って自分の国の言葉では意識せずにしゃべっていても、よその国の言葉に書き直すときにどの時制を選択するかはなかなか難しいものがあるなぁ。